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こちらは、主に素直でクールな女性の小説を置いております。おもいっきし過疎ってます
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死線(仮) 4-0~1. 素直クール作品 

 4.
 未成年の性行為は危険だ、といった教育的観念は決して嘘ではないが、僕の結論は正直次元の違う感想を持った。危険ではある、実際に身の危険を感じた。しかし、教育観念の危険性と僕が感じた危険性とは異なり、性行為の依存性が強く実生活に支障をきたすほどだった。
 教育理念でいう所の性行為における危険性は――先に断っておくが、中高と受けた性教育の説明と自己で調べた危険性を差している――未発達の未成熟の身体に生殖器を挿入する行為により、ホルモンバランスを正常に機能出来なくなる危険性を孕み、手法によっては心的外傷《トラウマ》を植えつけてしまう恐れがある、としている。まあ、自身の勉強不足が露呈して遠からず近からずといった危険性も同じく孕んではいるが、性行為観念は粗方この認識だ。
 対して実際に性行為を行った場合に感じた危険性は、大まかな依存性だた一点だった。しかしながらその一点が、教育理念や社会的絵空事を完膚なきまでぶち壊し、バベルの塔を崩さずとも吹き飛ばす、といった半端ではない辛辣なものだった。炸裂する快楽、凄まじい愛情、訳も分からず罪悪感すら覚えるほどの性交渉後の余韻、まどろみを味わった直後の反射的に再度訪れる高まり――そして繰り返される終わりのみえない性行為。
 このような超絶した快楽を高校生のガキが覚えてしまうと、成熟していない精神が破綻し、自制する事すらままならなくなる。寧ろ自制しなければならない必要性を、全くといっていいほど理解に苦しんだ。危惧するならば、したくなったらすればいい、そこに形は別としても愛情というものがあれば、なんら問題はないと感じてしまう事だ。
 性行為の危険性であり問題提議は、依存性が体を腐蝕し性行為を最優先としてしまい、それ以外の事柄を疎かにしてしまう。最悪の場合、全てを放棄――放置してしまうという負の魅力を持ち合わせていた。更に正常の判断が出来なくなり、暗に愛情を仄めかし――愛情の再確認、愛の果てにある受胎行為ではなく――快楽のみを求める事となる。満足に将来を見据える事を否定する強烈な快楽が、依存して蝕んでいく。
 性行為を覚えたての頃……僕は一心不乱に勤しみ、快楽に取り込まれ脳は過度のドーパミンの噴出に耐え切れず腐敗していった。性行為が全てで快楽に溺れ狂い、まともな判断もできないままに夏が過ぎ秋も暮れ、冬の最中だった。ソラと出逢いが僕の切欠になり、ホダネとの出逢いが僕を悄然と溶かしていった。


 ☆


 浴びせるような日差しを吸い込んだ緑々しい葉は、栄養高い地盤に脈々と根を巡らせる大木から元気に乱れていた。夏を感じソラを感じ、熱狂的に全ての熱を感じ続け、常に茹った脳味噌は沸騰寸前だった。徐々にではあるが、ソラの身体に脂肪が付き始めたのはこの頃だ。すらりとした肉体に円みが帯び、もっとも改善点だった抉り込むように鋭角に尖った顎が、にわか和らいでいく。後は頬が常に膨らみ、僕にとって最重要視している“下膨れ”の出来上がりを待ち焦がれていた。流石にソラの雰囲気は、一見して以前より変わる印象を持たれないが、黙々と月日を重ね“ぽっちゃり”のフォルムへと変貌していった。
 夏休み開始の合図――終業式の放課後、僕はホダネを連れたソラに呼び出され告白を受けた。返答は、迷うことなく承諾した。告白を受ける場所としては適当なのか、気になる程度に寂びれた人気のない場所だった。学校校舎の裏、僕も一度しか来たことがなかった草木が生い茂る場所になる。
 ソラは僕のフェチズムを概ね把握している、自分なりの基準に当て嵌め、脂肪の付き具合に及第点が出たのだろう。「君の判断に委ねるよ」と言って、ネクタイをスルスルと抜き、ブラウスのボタンを上から一つづつ外していく、裾はスカートの中に入れたままブラウスは垂れ下がり、質感が良さそうな肌が露になった。想像――妄想を繰り返し、ソラの顔に脂肪が付き始め、更にそれらを想定して虚像を広げ続けた。その答えが目前に現れた。
「ソラの成長振りに目を見張る物がある。その頬は及第点だけど、成長過程が窺える。若干腰の肉付きに物足りなさを感じるけど、今後に期待を持てるよね。こんな偏屈でコダワリの塊の僕で良かったら、こちらからお願いしたいよ」
「正直、まだまだ君の想い描いている身体には仕上がっていないと思って、自信がなかったんだけど……悪くなかったみたいだね。それと、君のフェチズムへの固執感、病的なまでの執拗さに胸を打たれた。どんな形だったとしても、無駄にエネルギーを垂れ流していない漢なんて、全く興味がないしね」
「まあ、自分でいうのもアレだけど、キモイわな」
 そこまで適切に指摘されると、自嘲はしないとしても苦笑するに至った。
「まあね、それは仕方ないさ、本当のことだから」
 ソラは微笑を浮かべた。そうして両手を背中に回して、レースの刺繍がなされるパステルカラーのイエローに彩られたブラジャーのホックを外した。この肉体改造のため必要以上に量感が増した乳房は、押さえつけられていた生地が捲れ、少々弾んで顔を出した。弛む事はあまりなく、張り詰めているようにバウンドを繰り返す。僕は思わず、掌を押し付けていた。指が吸い込まれていく感覚、汗ばんでシットリとした質感が手に関連する全ての部位に纏わり付いた。
「凄い……」
 未確認の感触に声を洩らしていた。既に僕の掌は止まらない。小刻みに震える掌を抑える事も出来ず、ただひたすら胸を揉みしだいていた。すうっとソラが僕の肩を引き寄せて抱きしめる、肩に顎を載せ囁いた。
「君にしては大きすぎると懸念していたんだが、この分だと問題なさそうだな」
 僕はしがみつくようにして、頭を縦に下げた。ソラは満足気に僕の耳をしがみ、求める先への発展途上の身体で締め付けた。追い込むようにして、ソラは桃の香りがするトリィトメントの匂いを顔中いっぱいに漂わせた、ツン――と鼻を打ち、僕はしこたま吸い込んで脳が刺激される。くらりと眩暈を覚え、うな垂れるようにソラの身体に身を預けた。
「ソラさん、半端ないです」
 生半可ではない視覚と嗅覚、そして触覚に聴覚――ソラの身体に、のめり込んでゆくように感じた僕は、フルに全神経を刺激され、経験にない事柄が僕をたじろかせた。込上げてくるフェチズムによるリビドゥは、そのふっくらとした脂肪感溢れる身体に貪りつけ、と僕を後押しする。いや、後押しどころか、背中を強引に蹴られ突き落とされる感覚だ。
 ソラは目尻を緩ませて、ほくそ笑み、囁いた。
「半端ないですか、それは良かった。すると……キスをすると、どうなると思う?」
「宜しくないと思います。安全という保障は一切ありません」
「そうですか、それは良かった。では」
 ソラの厚ぼったい唇が触れ合った。僕の唇の上から、生暖かい粘膜に塗れたソラの唇が蠢いた。歯がぶつかり、硬く乾いた音が唇を経由し電気信号として脳へ伝達する。質量感、全てが興奮材料だった。
 既に充血していたペニスはスラックスにテントを張らせ、四重にもなるバリアー越しにソラのヴァギナを小突く。トランクス、スラックス、スカート、ショーツを押し付けて、隔壁の襞に擦りつける。一度始めると、加速度的に摩擦し続け、動きを止めることなど不可能だった。混濁した視界の中、腰だけが意識を持ったように馬鹿になるほど突きまくった。ソラの体がペニスに突かれ持ち上がる。
 僕の首に纏わりつくようにしてソラは圧し掛かり、軽く悶えた。
「勘弁して下さい」
「――僕の意思では、無理です。おちんちんに聞いてください」
「お願いできますか?」
 ソフトタッチで、ペニスのラインをスラックス越しに滑らせたソラは伺う。……無言のまま、下半身を中心にして静止した、しかし制止した訳ではなかった。点と点を結ぶように意識が飛び始め、気が付くと――ソラの背中を校舎の壁に押し当て股に膝を突っ込む、そして身体を持ち上げて、胸の谷間に顔を深く沈み込ませていた。撥ね返すような弾力性に富む乳房に包み込まれた僕は、息をすると空気の抜けどころがなく、水分混じりの熱い息がべったりと互いの肌を蒸らした。
 圧迫する乳房の質感を頬で感じ、脳が融解しタプタプと波立ち朦朧としながら、ソラを揺らし続けた。途切れ途切れにソラの喘ぎ声が聞こえる。僕は集中し続けた。
「やばい、やばいよソラ。マズイって」
 不意に声が掛かるような気がした。しかし止まらない。
「ソラ、ソラったら」
「ああ、そうだよね」
 急にソラは肩を押し出し、僕の身体を引き剥がした。
「未練はあるが、このあたりのしておこう、な?」
「やだ」
 無意識に零していた。
「アンタは小学生のガキか」
 ソプラノの声音が畳み掛けた。よく分らないまま、霞がかった視界の中でソラが映し出された。割り込むように女性の顔が現れた。まあるい瞳にふっくらとした頬、毛先が広がり“下膨れ”が露になった――ホダネだった。
 荒々しく肩が上下し、僕は呼吸を整える。肘に手をついて、深く空気を吸い込み深呼吸した。ソラは切ない悲鳴のような吐息を洩らす。ホダネは手を胸に置き大きく縦に揺らす、頬を赤らめている。
 時間を凝縮したように密度の高い出来事の連続で、加速度的にソラと惹かれあった。無我夢中でソラを貪り、ソラを求めていた。この味を占めると引き戻せない、この先容易転がっていくさまを安易に想像出来た。
「あのね、君の気持ちも解るけどさぁ、見てみなさいよソラの背中」
 頭を掻きながら、ホダネは溜め息を吐く。「ほらぁ」と諭すようにして僕を一瞥、ソラの肩を強引に回して背中を見せつけた。
「もう、ホダネ……いいから」と、ソラは消沈する、振り向きざま苦笑が窺えた。
 見せつけられた途端、言葉を失った。ソラの背中の両肩甲骨辺りに、痛々しいまでの傷が拡がっていた。皮膚が捲れ上がり、細胞から結晶板が溢れかえるほどに血液が噴き出し、傷口を滲ませる。背中をコンクリートに打ち付けていたため、白の粉塵が傷口にこびりついてピンクに汚れている。砕かれた小石程度の破片が、全域に渡ってめり込んでいた。
 込み上げる罪悪感に苛まれ、僕は……戦慄した。
 何も言えず立ち尽くす。ホダネと目を合わす事は恥かしく、ソラに対してはバツの悪い思いが込上げ、僕は頭《こうべ》を垂れ平伏《ひれふ》した。
「いくよソラ」
「次回は本番だね、楽しみにしているよ」
 ソラはホダネに連れられ退散した。ゆっくり二人が去っていく背中を上目で眺めていた。ソラの腕に引っ掛かっていたブラを両肩に掛け、背中へ手を回してホックを装着する。肩と背中の肉が紐に食い込み、盛り上がりを魅せていた。肩の脂肪もさることながら、背中の贅肉の食い込みように引き込まれた。あのブラの紐が肉に貼り付いて脂肪が肉内を移動、パステルイエローの紐を上下五ミリ程度埋めていた。興奮冷めやまない互いの身体を推察すると、汗ばんだ肉はしっとりとしてブラの縁が黄ばみ、汗疹が出来るほど赤く腫れるはずだ。その脂肪感の“ぽっちゃり”を想像するに当たり、過度に硬化したペニスの先が塗れきっていて、精子混じりの半濁液が垂れ流れていた。
 戦慄していた僕は、意思に反してトランクスの中に手を入れていた。ソラの後ろ姿を直視しながらペニスを握り、皮を上下にシゴいて刺激を与えていた。自身から分泌された体液に塗れる陰茎はぬめり、射精は時間の問題になる。逝く寸前、射精感が訪れた瞬間、僕はソラに送っていた視線を動かしてホダネにやった。
 ――出る。
「ソラ」
 そう名を呼び、果てた。視界に入っていたホダネの情報は脳に送られている、視界には入るが僕は認識しない幾重にも折り畳まれたソックスの上、短めのスカートの下、その間に仰々しいまでの存在を示す“太もも”を視界に留め発射。ソラに欲情しつつも、ホダネの持つ太ももはソラの太ももよりも優《まさ》り、無意識にその視線を変更する行為を行っていた。ホダネの持つ太ももは“ふともも”までの可能性を秘め、現時点での“ぽっちゃり”の評価をホダネとしてしまう現実は、残念ながら自然の流れに沿っていた。
 僕はソラに惹かれてはいるが、ホダネにも惹かれている事実は否めない。以降確実にフェチズムの先“ぽっちゃり”に二人は移行していくであろう。期待が膨らみ充足される想いに包まれる、そして罪悪感はあまり感じる事はなかった。

  1. 2006/10/15(日) 23:38:02|
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死線(仮) 3. 素直クール作品 

 3.
「ソラ、ちょっと太ったんじゃない?」
 浮き足立ちつつ心胸躍る春も適当に過ぎ去り、軽鬱が伝染病の如く空気感染する五月病も成り行き的に過ぎ去り、緑林香る夏を迎え始めていた。そろそろ教室内は蒸して、脇の匂いが宜しくない友人が女子に嫌われ始める頃、ソラへ掛けられた級友の言葉が耳に入った。
「まあね……好きな人が居るから、努力しているんだ」
 席に座るソラと会話をしながら級友は机に手をついた。
「そうなんだ、それで?」
「私は太腿がないから、股ずれするぐらいの太ももになれってさ。体質があるから、なかなか難しいんだよ」
 そう言ってソラは、胸を鷲掴みにしていた。「こちらばかりが発育するよ」と頭を掻いて、まじまじと自分の乳房を眺め、弄びながら辟易とする。
「あーあ、もったいないなぁ。いい身体してんのに」
 友人の口から溜め息が零れ、そして尖らせ肩をすくめた。級友は自分の身体を舐めるようにして眺めて、深く肩を沈めた。
「穂種のふっくらとした身体、正直交換して欲しいよ」
「いくらでもあげるから、代わりによこせ」
 悠然として穂種《ホダネ》は、おくれと手を差し出した。そして明るい晴れやかな笑顔を浮かべる。
「本当、元気で可愛いね」
 手を伸ばしホダネの前髪を掻き分けるソラは、情けない笑みを表して嘆いている。ソラは物欲しそうにして、目線の先にあるホダネの腰へと腕を巻きつかせた。腹部に顔を埋めるソラは、話の流れからするとよほど柔らかい感触を味わっていた。
「穂種、あんたのお腹羨ましいわ、私の括れが口惜しい」
 もぞもぞとソラは、腹部に顔を押し付けながら穂種を見上げる。ソラの横顔から垣間見える面持ちは瞳が潤い、羨ましくもあり恨めしい表情を穂種に送る。
 それを受けた穂種は少し呆けて「ホント……ソラって怖いわ、エグイ。お腹の肉を分けて欲しいなんて――アンタそのうち殺されるよ」と、苦笑交じりでソラを諭していた。
「まあね」
 同じくソラも苦笑を滲ませて、腹部から体を離す。
 眺めるかぎり親密と思える二人は、まるで姉妹のように仲良く会話を繰り広げる。妹の位置に居るホダネという女の子は可愛らしく、僕にとって軽く興味を引く女性だった。真撃こそしないが、まずまずといった印象を受ける。
 校則に違反しない程度の軽いブリーチを掛け、ほんの少しばかりスチームを当てたようにふわりとしていて、キュートなボブ。垂れた目尻に大き目で膨らみのある唇、跳ねる髪先が頬に掛かる。畏まるように着こなすソラとは対照的に、ホダネは指定のネクタイを締めずトータル的に着崩していた。
 ブラウスのボタンを第二まで開き胸元を露にしている、鎖骨付近に肉が載り乳房の膨らみは適当に小ぶりで、全体のフォルムを想像するに、“ぽっちゃり”が鮮やかに印象付けられる。裾はプリーツスカート内には収められず、白い生地がたっぷりと覆いつくしていた。そして注目すべき点は二点あるのだが、その一点――まるまるとした二本の太ももだ。膝上のスカート丈から、ホダネがはしゃぐたびスカートが遊び、見え隠れする太ももは興奮冷め止まず健康的でいて、エロティシズムを感じさせる。決して弛まない張りのある質量感は、僕を引火させ身を焦がすように、ペニスを硬く反り立たせた。このまま目線を下へともってはいかず、やもすれば希望的観測に基づいて想像するに堅い綿の汗ばむショーツを現すかもしれないと、その場に視線を釘付けにしておきたかった。その性的興奮に反して、ソックスがギャルテイスト丸出しのダブついたルーズソックスだったため、ペニスを萎えさせるには然るべきものがあり――そうさせた。いいたくはなかったが我慢できず、この憤りに駆逐された僕は思わず「ルーズリーフであって欲しかったなぁ」と、口走ってしまっていた。自嘲気味に苦笑し、二重の意味合いで苛まれる事になった。足元のグリーンのコンバースレザー地ジャックパーセルは、冬場と春先に羽織るネクタイと同色のブレザーに合わせた定番ものとなっていた。定番だが“おぼこい”を基準とする僕としては、ホダネのチョイスはベストなものだと感服した。
 残る一点は、いまだ確認する事が出来ない腰とお腹だ。残念な事に、重力に従い垂れ下がるブラウスの裾が全てを隠してしまい、想像するに腕を回したソラの感想と、腕の食い込みさ加減でしか最良かどうか判断しなくてはならなかった事だ。推測は最良と太鼓判を押されてはいるが、実際は思いのほか細かったりはしていないか、と確定を出すのは時期早々だと感じるに留まった。
「んで、そいつって、どれ?」
 ソラの姉という位置と逆転したように、ホダネはさり気なく叱咤しソラの腕を取った。
「彼」
 僕は彼女たちに送っていた視線を瞬時に逸らす。突き刺さる視線を彼女たちから受ける事になった。僕を確認して、どういった印象を受けたのかは分からなかったが、次に続く彼女たちのやり取りの中で理解する事になる。
「あ、あれね、パッとしないね。アレ」とホダネ。
「見た目じゃないよ、無駄に溢れたエネルギーが凄いんだよ」とソラ。
「ありゃホントだ、オーラ出まくってるや。こりゃあ、ソラ……妊娠確定しました。残念無念」ホダネの突き刺さる一言だった。
 五月蠅いよ、嗜好だから仕方がないだろう、と喉から出掛かった罵声を胃に押し込んで、バツの悪い思いをしながら頭を掻いた。僕はふて腐れてぶつぶつと小言を並べ机に伏した。
  1. 2006/10/08(日) 03:53:35|
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死線(仮) 2. 素直クール作品 

 2.
 遡る事一年前、僕はロリィタコンプレックスに似た、“下膨れ”“ぽっちゃり”を主軸とするフェティズムを公言していた。高校に入学して、ある程度の友人関係を形成した際に友人間で性癖を暴露する。僕は美しさには反応せず、可愛らしさにのみ反応を示していた。しかし僕は幼児に対する性的な嗜好を持つペドフィルではない。
 どちらかというと、ふくよかな女性の滲む出る母性に安心を覚え、幼さの残る面持ちに性的興奮を感じる。その神聖不可侵と思しき清楚――清純と呼ばれる少女に、卑猥な行為を要求することは想像にかたくなく、過度の込上げを感じずには居られなかった。しかしながら母親のような母性が少女に中に見出せなければ、その込上げも半減する。
 僕の、そのフェティズムを代表する嗜好“おぼこい”子と呼ばれる女性を求め、怠惰した学生生活を送っていた。惰性感を否めないのは、求めうる最上級の母性本能が際立つおぼこい子が周りに居なかったためだ。過去にギャルブームから派生したヤマンバギャルが蔓延っていた。そのガングロと呼ばれる、逆パンダメイク――ダークブラウンのファンデーションを塗りたくった挙句、アイシャドウやアイラインに白をベースとしたパールやラメが入る色彩を使用し、見るからに、その名の通り白黒のパンダの模様を反転させたメイクが、確固たる自信を持ち合わせ嬉々として施されていた。
 その後、ガングロやヤマンバブームは収束を迎え、満を持したかのように美白ブームが到来、そのまま流れるように癒しブームへとスイッチしていく。キーワードは清純や清楚そして美白、清清しい穢れのない女性が蹂躙していった。
 日焼けサロンへ意気揚々と出かけ、サンオイルという名目の、どう転んでみても食用油としか思えない不愉快感極まる液体を全身に染み込ませ、身体全体を焦がしていた女性云々は後悔の念に苛まれていればいい訳で、その後の展開など知るよしもない。
 着々と癒しブームは浸透していったが、しかしながら美しく綺麗という意味合いが色濃く、可愛らしい幼い無垢といった要素は癒しのカテゴリー内に存在しえなかった。その癒しブームも着々と終焉を迎え、主流や流行といった周期的サイクルを終え、ギャルブームが再度猛威を奮い始めていた。
 自身のフェティズムを満たす女性の登場は、このギャルブームの始まりによってままならなくなり、おぼこい子を探し求愛するにあたって、十分過ぎるほどの悲壮感を露呈した。怠惰感情を生み出すには、環境が整い過ぎているほどだ。
 待ち望む嗜好の情勢が悪化を辿る最中、彼女になる女性――今里宙《イマザトソラ》に出逢った。同級生のソラはギャルブームが邁進する中で、癒しブームを代表するような綺麗で美しい姿だった。高校生ともなると、手馴れたように化粧を施す女子が当たり前、ソラのように素顔の女子は全女生徒の中では数えるほどだった。その美しさの風格を兼ね備えたソラは、癒しに後押しされるように母性に満ち溢れ、成熟した雰囲気を醸し出す。才色兼備といった言葉では収まりきらないポテンシャルは、多才に溢れ返っていた。
 おぼこい子を待ちわびる僕としては、ソラとの出逢いは予想外の出来事だった。まあ、こういってしまえばそれまでではあるが……色素を抜き過ぎた茶髪の生ゴミ臭漂うギャルに比べると、よほどソラとの出逢いは幸せだった、しかしおぼこい子に“不器用さ”や“鈍感さ加減”俗称として“ドジっ子”の付加価値を見出す僕としては、反して嗜好ではない、というのもあった。接隣するものの類似して非なるもの、これがソラに対する感想だ。
 僕はこれといって、面が良い訳でもファッションに独自性がある訳でも特化して身長がある訳でもないが、一学期も終盤に差し掛かる頃、ソラは話し掛けてきた。
「君はペドフィリアの持ち主らしいが、なかなか勝気だね」
 何を勘違いしたのか、メディア戦略のように都合よく切り貼りされた僕の発言を聞いたのだろうか、はたまた話題を切り出して親密になりたいのか、はっきりとした事は分からないがソラが近づく。
「僕はペドじゃないよ。幼い女の子が好みなんだ」
 僕は答える。おぼこい子といっても一般的に嗜好を表す言葉ではないために、称して幼い子としてソラに伝えた。
「ほう、では君はロリコンなんだ」
「誰がだ」
 五時間目と六時間目の間の休み時間に話しかけられた。昼ごはんをたらふく腹に押し込んだ僕は、五時間目の授業を話し半分に聞き流して、ぼやけた視界の中でまどろんでいた。空腹を満たすと次は睡眠欲と、際限なく訪れる欲求には逆らえない。意識も覚醒していないため、僕は「ええっと、今里さん……かな?」と、目を擦りながら呟いた。
「そう、君としては初めましてかな、私はよく眺めているから……」
 前の席が都合よく空席だった。ソラはお尻を深く沈め、どんという音をなして座り込む。尊大でかつ横柄な態度で僕の机に肘を突き、そのクの字に曲げた掌に顎を置いた。近距離で僕を凝視する。
「ロリィタコンプレックスとは失礼な、一緒にしてもらっても困るよね。本質的には全く異なった趣味だよ」
 ソラの透き通る茶掛かった艶のある黒い瞳は、爛々と輝きを放つ。僕の嗜好に興味がある様子だ、食い入るように僕をじっと見据える。何も語らず、ソラは続きを待っていた。
「……もしかして、僕の趣味の続きを待ってる?」
 コクリと僕から視線を外さずに、ソラは軽く頭を下げる。黒髪のストレートショートヘアは、やわらかく揺れ動き僕の頬を打つ。トリィトメントのほのかな香りは纏わりつくように充満した。
「あのね、ロリィタコンプレックスとペドフェリアは一般的には同意語だけど、僕としては違うんだよ。ロリィタは青年が少女を性的に愛情を持つ事を差して、ペドはそれよりも下、幼児に性的愛情を持つと考えているんだ。だから僕は青年でもないし、幼児には興味がない。それに……」
「それに?」
 暫らくの間沈黙が流れた。僕の嗜好を簡略化して説明する事は、なかなかに骨が折れる作業だった。脳内でキーワードを並べ、一本化するように組み立てて積み上げる。「そうなだぁ」と無意識に洩らし、時間の掛かる作業になった。そうしてある程度当たりが付いたところで、纏めながら話しをする。
「ペドは精神的に障害を含んでいて、病的な意味合いも加味している。ロリィタコンプレックスは病気ではないのか? と言われると言及は避けたいけど、変態と同じで、性癖なんだと思うんだよね。僕はロリィタコンプレックスと言われても別に構わないが、ペドフィル呼ばわりは勘弁願いたい」
 僕はずいと顔を寄せる、額同士が接してしまうほど近づいて、自身の嗜好ついて説明に入る。
「で、僕のペドフェリアでもロリィタコンプレックスでもない性的嗜好を簡単に表すと、母性本能を感じる事が出来るおぼこい子なんだ」
 その後六時間目開始のチャイムが鳴るまで、ロリィタコンプレックスによく見られる身体のパーツに性的興奮を感じるフェティズムを説明し、母性と清楚を汚す事により得る快感を説明した。あくまでもこれは僕の性癖なので、ソラは共感や理解を示す事はなかったが、「君の嗜好は概ね把握した」と言い席を立った。
 授業開始のチャイムと同時に席を立ったソラの後ろ姿は、凛として堂々としたものだった。只の同級生から女友達になったソラを改めて確認してみると、後ろ姿でありながらも、滲み出る美しさが周囲の女子生徒の中において一線を画していた。上げておいて失礼な気もするが、ソラは興味の対象ではないけれど、括れのある良く出来た身体の曲線だった。ソラが纏う周りの空気感は他のものを圧倒する力があり、それでいてテリトリーに進入すると母性愛に包まれるような暖かさと優しさがある。
 崩すことなく着込まれたブラウスとネクタイにスカート、そしてソックスにローファー。それらはソラの身体にジャストフィットしていた。白いブラウスは清清しさを感じ、藍味が強いグリーンのネクタイが映え、綿とアクリルの混合生地のスカートはグレーに染まりプリーツ加工されている、少なめに入るプリーツにより若干タイトな作りになっていて、スカート丈は膝下だ。チラリとみせる、すらりとした細身の太腿には脂肪感がなく、適度に鍛えられた筋肉が曲線を描いて盛り上がる。足から脛にかけて覆う紺のソックスは、当然として過度にダブつくルーズソックスでは断じてなく、興奮高まる縦筋の入る清涼感漂うソックスになる。ソラの好みだろうか、意図的に艶を抑えたダークブラウンの革靴、以前流行ったワラビータイプだった。
 この着衣を窺うかぎり、きっちりとした性格だろう。ソラは背中越しに手の甲を見せ左右に振っていた。
 ソラとの初遭遇は、こういった形で胸を合わす事になった。


 (つづく)

  1. 2006/10/02(月) 01:05:31|
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死線(仮) 素直クール作品 冒頭

 冒頭


「肩を持って、こう刺す」彼女は、眉の一つもしかめることはなかった。
「僕は、胸を空ければいいんだね」僕は彼女に聞いていた。
「そうそう、やれば出来るじゃない」およそ感情のない彼女の言葉だった。
 やけに明るい部屋に僕達は居た。高校に入ったその年の夏から、約一年ほど付き合いをしている彼女の部屋。愛情など冷める事はなく、いまだ愛くるしい彼女と二人――正座をして向かい合っていた。
「君のは出刃だ、私のは刺身だ、もしかすれば君は失敗するかも知れない。でも……心配するな」
 僕らはお互いに向かい合い片手で肩を掴む、もう片方の手は互いの胸にあった。膝を立てて見つめ合う。
「その後、私が、ちゃんと自分の胸を刺すから」
 食い入るように僕は彼女を見つめていた。「うん……」と僕は頷いて、しっかりとその柄を握り締める。ずっしりとした木製の質感、使い込まれたその柄は、ニスを幾度も無く塗り重ねたような重厚感――鈍く歪み艶やかに黒光りをしていた。
 これから行おうとしている事を考えると、天井にある煌々と光を放つ蛍光灯は実に似つかわしい。無機質なクーラーの振動音が部屋中に響き渡っていた。窓はしっかりと閉じられ、床とドアの隙間から音をなして暖かい風が冷えた室内に入り込む。そういった雑音が飛び交う中で、僕達は静かに会話を交わしていた。
 彼女の股の間から精液が垂れ流れ、半濁して溜まるベッドの上で僕らは距離を取っていた。しかし惹かれ合う鼓動はシンクロし、精神上では重なり合い密着していた。僕も彼女も――事終えた直後の姿だった。
 ふくよかな彼女の身体は汗ばみ、高揚した身体はほんのり桃色に変化していた。その母性を象徴した大きな胸は大きく、四つん這いになると綺麗な楕円を二つ形成する。荒々しく息が漏れ、生ぬるい吐息は互いの肌を打つ。クーラーから吹き出す冷気により、僕らのほてりは徐々に収まっていった。
 この場所は物が少なく殺風景な彼女の部屋、雑音に囲まれて静かにときが進む。この緊張感がなければ、おおよそ気付かないノイズだろう。心臓から流動する血液の奏でる音でさえ、触れる肌を介して伝わりそうなほどだった。
「ねえ、血が出てるよ」僕の胸の中央よりやや左側から、真紅の液体が流れ出る。
「私のもな」彼女は頬を和らげる。
 豊満な乳房から、丸みをつたうように血が流れ出す。ぷにゃりとした腹部を流れ、へそを経由して一度性器の上部に生える陰毛に絡まり留まった。じわりと血液が珠のように膨らんでゆき、溢れヴァギナのすじを渡る。そうしてシーツに吸われた精子混じる体液が溜まる箇所に、真赤な液体が一雫落ちた。直後ポタポタポタと、ヴァギナから排出するように血が流れ、垂れ落ちる。精子と赤血球が混濁し、シーツに窪みを作り溜まっていく。混ざり合い変色することはなかった。
「この状態で重なり合えば、死ねる。最後はキスをしようね」と彼女。
「そうだね。キスをしよう」と僕。
 その空間に違和感を覚えた事は忘れ、彼女に魅了されていた。このまま抱き合って死ぬ事が通常の流れとさえ思えるようになっていた。現在の正常な判断――それは、このまま彼女を刺して抱きしめ合い、身震いするほどの口づけを交わす事だ。
 僕は彼女の愛情に答え、思い切り胸へと刺し込んだ。不思議と乾いた掌、出刃包丁を硬く握り締めていた。潤う唇から舌が入り込み、唾液を弄び絡め合った。
 視界がほのぼやける最中、例外はないとばかりに走馬灯が襲い掛かっていていた。彼女の笑顔がへしゃげ、霞がかる灰色の世界を眺めながら、彼女との出逢いが思い浮かぶ。高校に入学して、真新しい環境に慣れてきた頃の映像が流れ出していた。
 包丁により血液が溢れ出してはいるが彼女の表情は変わらず、映し出された当時の彼女は、目の前に居る微動だにしない彼女と変わらない微笑だった。違いが出ているのは、現在彼女の持つ雰囲気が若干違う、というところだ。


 (つづく)

  1. 2006/09/29(金) 01:34:48|
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