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死線(仮) 素直クール作品 冒頭

 冒頭


「肩を持って、こう刺す」彼女は、眉の一つもしかめることはなかった。
「僕は、胸を空ければいいんだね」僕は彼女に聞いていた。
「そうそう、やれば出来るじゃない」およそ感情のない彼女の言葉だった。
 やけに明るい部屋に僕達は居た。高校に入ったその年の夏から、約一年ほど付き合いをしている彼女の部屋。愛情など冷める事はなく、いまだ愛くるしい彼女と二人――正座をして向かい合っていた。
「君のは出刃だ、私のは刺身だ、もしかすれば君は失敗するかも知れない。でも……心配するな」
 僕らはお互いに向かい合い片手で肩を掴む、もう片方の手は互いの胸にあった。膝を立てて見つめ合う。
「その後、私が、ちゃんと自分の胸を刺すから」
 食い入るように僕は彼女を見つめていた。「うん……」と僕は頷いて、しっかりとその柄を握り締める。ずっしりとした木製の質感、使い込まれたその柄は、ニスを幾度も無く塗り重ねたような重厚感――鈍く歪み艶やかに黒光りをしていた。
 これから行おうとしている事を考えると、天井にある煌々と光を放つ蛍光灯は実に似つかわしい。無機質なクーラーの振動音が部屋中に響き渡っていた。窓はしっかりと閉じられ、床とドアの隙間から音をなして暖かい風が冷えた室内に入り込む。そういった雑音が飛び交う中で、僕達は静かに会話を交わしていた。
 彼女の股の間から精液が垂れ流れ、半濁して溜まるベッドの上で僕らは距離を取っていた。しかし惹かれ合う鼓動はシンクロし、精神上では重なり合い密着していた。僕も彼女も――事終えた直後の姿だった。
 ふくよかな彼女の身体は汗ばみ、高揚した身体はほんのり桃色に変化していた。その母性を象徴した大きな胸は大きく、四つん這いになると綺麗な楕円を二つ形成する。荒々しく息が漏れ、生ぬるい吐息は互いの肌を打つ。クーラーから吹き出す冷気により、僕らのほてりは徐々に収まっていった。
 この場所は物が少なく殺風景な彼女の部屋、雑音に囲まれて静かにときが進む。この緊張感がなければ、おおよそ気付かないノイズだろう。心臓から流動する血液の奏でる音でさえ、触れる肌を介して伝わりそうなほどだった。
「ねえ、血が出てるよ」僕の胸の中央よりやや左側から、真紅の液体が流れ出る。
「私のもな」彼女は頬を和らげる。
 豊満な乳房から、丸みをつたうように血が流れ出す。ぷにゃりとした腹部を流れ、へそを経由して一度性器の上部に生える陰毛に絡まり留まった。じわりと血液が珠のように膨らんでゆき、溢れヴァギナのすじを渡る。そうしてシーツに吸われた精子混じる体液が溜まる箇所に、真赤な液体が一雫落ちた。直後ポタポタポタと、ヴァギナから排出するように血が流れ、垂れ落ちる。精子と赤血球が混濁し、シーツに窪みを作り溜まっていく。混ざり合い変色することはなかった。
「この状態で重なり合えば、死ねる。最後はキスをしようね」と彼女。
「そうだね。キスをしよう」と僕。
 その空間に違和感を覚えた事は忘れ、彼女に魅了されていた。このまま抱き合って死ぬ事が通常の流れとさえ思えるようになっていた。現在の正常な判断――それは、このまま彼女を刺して抱きしめ合い、身震いするほどの口づけを交わす事だ。
 僕は彼女の愛情に答え、思い切り胸へと刺し込んだ。不思議と乾いた掌、出刃包丁を硬く握り締めていた。潤う唇から舌が入り込み、唾液を弄び絡め合った。
 視界がほのぼやける最中、例外はないとばかりに走馬灯が襲い掛かっていていた。彼女の笑顔がへしゃげ、霞がかる灰色の世界を眺めながら、彼女との出逢いが思い浮かぶ。高校に入学して、真新しい環境に慣れてきた頃の映像が流れ出していた。
 包丁により血液が溢れ出してはいるが彼女の表情は変わらず、映し出された当時の彼女は、目の前に居る微動だにしない彼女と変わらない微笑だった。違いが出ているのは、現在彼女の持つ雰囲気が若干違う、というところだ。


 (つづく)

  1. 2006/09/29(金) 01:34:48|
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