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こちらは、主に素直でクールな女性の小説を置いております。おもいっきし過疎ってます
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死線(仮) 2. 素直クール作品 

 2.
 遡る事一年前、僕はロリィタコンプレックスに似た、“下膨れ”“ぽっちゃり”を主軸とするフェティズムを公言していた。高校に入学して、ある程度の友人関係を形成した際に友人間で性癖を暴露する。僕は美しさには反応せず、可愛らしさにのみ反応を示していた。しかし僕は幼児に対する性的な嗜好を持つペドフィルではない。
 どちらかというと、ふくよかな女性の滲む出る母性に安心を覚え、幼さの残る面持ちに性的興奮を感じる。その神聖不可侵と思しき清楚――清純と呼ばれる少女に、卑猥な行為を要求することは想像にかたくなく、過度の込上げを感じずには居られなかった。しかしながら母親のような母性が少女に中に見出せなければ、その込上げも半減する。
 僕の、そのフェティズムを代表する嗜好“おぼこい”子と呼ばれる女性を求め、怠惰した学生生活を送っていた。惰性感を否めないのは、求めうる最上級の母性本能が際立つおぼこい子が周りに居なかったためだ。過去にギャルブームから派生したヤマンバギャルが蔓延っていた。そのガングロと呼ばれる、逆パンダメイク――ダークブラウンのファンデーションを塗りたくった挙句、アイシャドウやアイラインに白をベースとしたパールやラメが入る色彩を使用し、見るからに、その名の通り白黒のパンダの模様を反転させたメイクが、確固たる自信を持ち合わせ嬉々として施されていた。
 その後、ガングロやヤマンバブームは収束を迎え、満を持したかのように美白ブームが到来、そのまま流れるように癒しブームへとスイッチしていく。キーワードは清純や清楚そして美白、清清しい穢れのない女性が蹂躙していった。
 日焼けサロンへ意気揚々と出かけ、サンオイルという名目の、どう転んでみても食用油としか思えない不愉快感極まる液体を全身に染み込ませ、身体全体を焦がしていた女性云々は後悔の念に苛まれていればいい訳で、その後の展開など知るよしもない。
 着々と癒しブームは浸透していったが、しかしながら美しく綺麗という意味合いが色濃く、可愛らしい幼い無垢といった要素は癒しのカテゴリー内に存在しえなかった。その癒しブームも着々と終焉を迎え、主流や流行といった周期的サイクルを終え、ギャルブームが再度猛威を奮い始めていた。
 自身のフェティズムを満たす女性の登場は、このギャルブームの始まりによってままならなくなり、おぼこい子を探し求愛するにあたって、十分過ぎるほどの悲壮感を露呈した。怠惰感情を生み出すには、環境が整い過ぎているほどだ。
 待ち望む嗜好の情勢が悪化を辿る最中、彼女になる女性――今里宙《イマザトソラ》に出逢った。同級生のソラはギャルブームが邁進する中で、癒しブームを代表するような綺麗で美しい姿だった。高校生ともなると、手馴れたように化粧を施す女子が当たり前、ソラのように素顔の女子は全女生徒の中では数えるほどだった。その美しさの風格を兼ね備えたソラは、癒しに後押しされるように母性に満ち溢れ、成熟した雰囲気を醸し出す。才色兼備といった言葉では収まりきらないポテンシャルは、多才に溢れ返っていた。
 おぼこい子を待ちわびる僕としては、ソラとの出逢いは予想外の出来事だった。まあ、こういってしまえばそれまでではあるが……色素を抜き過ぎた茶髪の生ゴミ臭漂うギャルに比べると、よほどソラとの出逢いは幸せだった、しかしおぼこい子に“不器用さ”や“鈍感さ加減”俗称として“ドジっ子”の付加価値を見出す僕としては、反して嗜好ではない、というのもあった。接隣するものの類似して非なるもの、これがソラに対する感想だ。
 僕はこれといって、面が良い訳でもファッションに独自性がある訳でも特化して身長がある訳でもないが、一学期も終盤に差し掛かる頃、ソラは話し掛けてきた。
「君はペドフィリアの持ち主らしいが、なかなか勝気だね」
 何を勘違いしたのか、メディア戦略のように都合よく切り貼りされた僕の発言を聞いたのだろうか、はたまた話題を切り出して親密になりたいのか、はっきりとした事は分からないがソラが近づく。
「僕はペドじゃないよ。幼い女の子が好みなんだ」
 僕は答える。おぼこい子といっても一般的に嗜好を表す言葉ではないために、称して幼い子としてソラに伝えた。
「ほう、では君はロリコンなんだ」
「誰がだ」
 五時間目と六時間目の間の休み時間に話しかけられた。昼ごはんをたらふく腹に押し込んだ僕は、五時間目の授業を話し半分に聞き流して、ぼやけた視界の中でまどろんでいた。空腹を満たすと次は睡眠欲と、際限なく訪れる欲求には逆らえない。意識も覚醒していないため、僕は「ええっと、今里さん……かな?」と、目を擦りながら呟いた。
「そう、君としては初めましてかな、私はよく眺めているから……」
 前の席が都合よく空席だった。ソラはお尻を深く沈め、どんという音をなして座り込む。尊大でかつ横柄な態度で僕の机に肘を突き、そのクの字に曲げた掌に顎を置いた。近距離で僕を凝視する。
「ロリィタコンプレックスとは失礼な、一緒にしてもらっても困るよね。本質的には全く異なった趣味だよ」
 ソラの透き通る茶掛かった艶のある黒い瞳は、爛々と輝きを放つ。僕の嗜好に興味がある様子だ、食い入るように僕をじっと見据える。何も語らず、ソラは続きを待っていた。
「……もしかして、僕の趣味の続きを待ってる?」
 コクリと僕から視線を外さずに、ソラは軽く頭を下げる。黒髪のストレートショートヘアは、やわらかく揺れ動き僕の頬を打つ。トリィトメントのほのかな香りは纏わりつくように充満した。
「あのね、ロリィタコンプレックスとペドフェリアは一般的には同意語だけど、僕としては違うんだよ。ロリィタは青年が少女を性的に愛情を持つ事を差して、ペドはそれよりも下、幼児に性的愛情を持つと考えているんだ。だから僕は青年でもないし、幼児には興味がない。それに……」
「それに?」
 暫らくの間沈黙が流れた。僕の嗜好を簡略化して説明する事は、なかなかに骨が折れる作業だった。脳内でキーワードを並べ、一本化するように組み立てて積み上げる。「そうなだぁ」と無意識に洩らし、時間の掛かる作業になった。そうしてある程度当たりが付いたところで、纏めながら話しをする。
「ペドは精神的に障害を含んでいて、病的な意味合いも加味している。ロリィタコンプレックスは病気ではないのか? と言われると言及は避けたいけど、変態と同じで、性癖なんだと思うんだよね。僕はロリィタコンプレックスと言われても別に構わないが、ペドフィル呼ばわりは勘弁願いたい」
 僕はずいと顔を寄せる、額同士が接してしまうほど近づいて、自身の嗜好ついて説明に入る。
「で、僕のペドフェリアでもロリィタコンプレックスでもない性的嗜好を簡単に表すと、母性本能を感じる事が出来るおぼこい子なんだ」
 その後六時間目開始のチャイムが鳴るまで、ロリィタコンプレックスによく見られる身体のパーツに性的興奮を感じるフェティズムを説明し、母性と清楚を汚す事により得る快感を説明した。あくまでもこれは僕の性癖なので、ソラは共感や理解を示す事はなかったが、「君の嗜好は概ね把握した」と言い席を立った。
 授業開始のチャイムと同時に席を立ったソラの後ろ姿は、凛として堂々としたものだった。只の同級生から女友達になったソラを改めて確認してみると、後ろ姿でありながらも、滲み出る美しさが周囲の女子生徒の中において一線を画していた。上げておいて失礼な気もするが、ソラは興味の対象ではないけれど、括れのある良く出来た身体の曲線だった。ソラが纏う周りの空気感は他のものを圧倒する力があり、それでいてテリトリーに進入すると母性愛に包まれるような暖かさと優しさがある。
 崩すことなく着込まれたブラウスとネクタイにスカート、そしてソックスにローファー。それらはソラの身体にジャストフィットしていた。白いブラウスは清清しさを感じ、藍味が強いグリーンのネクタイが映え、綿とアクリルの混合生地のスカートはグレーに染まりプリーツ加工されている、少なめに入るプリーツにより若干タイトな作りになっていて、スカート丈は膝下だ。チラリとみせる、すらりとした細身の太腿には脂肪感がなく、適度に鍛えられた筋肉が曲線を描いて盛り上がる。足から脛にかけて覆う紺のソックスは、当然として過度にダブつくルーズソックスでは断じてなく、興奮高まる縦筋の入る清涼感漂うソックスになる。ソラの好みだろうか、意図的に艶を抑えたダークブラウンの革靴、以前流行ったワラビータイプだった。
 この着衣を窺うかぎり、きっちりとした性格だろう。ソラは背中越しに手の甲を見せ左右に振っていた。
 ソラとの初遭遇は、こういった形で胸を合わす事になった。


 (つづく)

  1. 2006/10/02(月) 01:05:31|
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